特攻に出る場合、「片道燃料」しか積んでいなかったという人があります。どうせ死ぬのだから、帰りの半分は必要ないから、片道でいいだろうと・・・。
とんでもないウソです。
整備兵は、自分の手掛けた飛行機にはものすごく愛着をもっているんですよ。若い搭乗員がその飛行機に乗って、帰らぬフライトに旅立つんですよ。
どんな旧式の飛行機でも、ガタがきている飛行機でも、完璧に整備しようと出撃の前夜は、その特攻機の翼の下で眠るというほど努力し、燃料も満タンにします。
それがにんげんの情です。実際、彼らは「せめて新品の飛行機で行かせてやりたい」という思いで心の中で哭きながら、ボロ飛行機の整備に格闘していたのです。
- 神坂次郎『特攻隊員の命の声が聞こえる』
尖閣で海上保安庁に攻撃をした中京工作船のビデオをネツトに配信した海上保安官殿、あなたは憂國の士であります。
熱海遠征からの帰還途中、藤沢に宿をとつた。初めての藤沢の夜である。
「ホテルで貰つたレストランのクーポン持つてきました」、「疲れてるから余り食えないつす」、「じやあ、呑め。居酒屋に行く」。
日の出食堂といふレトロな居酒屋に入る。いや、レトロ風な居酒屋である。店内には昔懐かしの看板やらお面らやブロマイドやらメンコなどがデイスプレイされてゐる。
いきなり鍋が出てきて驚かされる。「何これ?」、「お通しです」。「ここチエーン店ですか?」、「いえ、此処だけです。有りがちな店つて言われますけどね」。
昔つぽいメニユー。味はなかなか。「鰐つてワニですか?」、「鰐ですよ。数があまりないので少なめですが」。鰐の唐揚を初めて食ふ。
「尖閣のビデオ観た?」、「完全に体当り攻撃じやん。特攻かよ」、「あれ観た支那人はガッツポーズだな」、「沈めときや良かつたのに」。
「生麦酒半額がそろそろ終わりますけど」、「へつ?半額だつたの?」、「九時まで半額です」。
知らなかつたよ。じやあ最後に生麦酒もう一杯。店を出る前にお菓子を一人一個ずつくれる。面白ひ店であつた。
「もう一軒行くぞ~」、「一旦ホテルに戻つて洗濯物乾燥機に入れてきます」、「じやあホテルに戻つてから出直すか」。
部屋に戻ると爆睡。電話で起される。「もう一軒行けますか?」、「コンビニにしとこうか」。
今宵も醉つて候。